UXリサーチでは、インタビュー実施より、文字起こし、タグ付け、引用確認、レポート作成に時間がかかります。AIはこの整理を支援できますが、もっともらしい多数意見を作ってしまう危険もあります。

調査の質を保つには、AIを結論の代行ではなく、根拠へ戻れる整理役として使います。

調査工程ごとのAI活用

工程AIに任せること人が判断すること
計画質問案、抜け漏れ候補調査目的、対象者、倫理
実査リアルタイムメモ、時刻付け深掘り、場の判断
整理文字起こし、要約、引用候補誤変換、匿名化
分析コード候補、類似発言の整理テーマ解釈、反証例
報告構成案、表現の統一結論、限界、意思決定

質問設計で使う

調査目的、知りたい行動、確認済みの仮説を入力し、誘導質問や二重質問を指摘させます。AIが作った質問をそのまま読むのではなく、実際の利用場面を語ってもらえる形へ直します。

例として「この機能は便利ですか」ではなく、「最後にこの作業をしたとき、最初から順番に教えてください」と行動を聞きます。

インタビュー記録を整える

録音には事前同意を取り、利用目的、共有範囲、保存期間を説明します。文字起こし後は、氏名、会社名、顧客番号など分析に不要な情報を置換します。

重要な引用には音声の時刻を付けます。AI要約の文章を参加者の直接発言として引用せず、原音で確認した表現だけを使います。

コード化とテーマ分析

最初からAIへ「主要な課題を3つ」と聞くと、頻出語へ引っ張られます。次の順に進めると根拠を保ちやすくなります。

  1. 発言を意味のまとまりへ分ける
  2. 各まとまりに短いコード候補を付ける
  3. コードごとに発言と参加者数を並べる
  4. 類似コードをテーマ候補へまとめる
  5. 各テーマに反する発言を探す
  6. リサーチャーが採用・統合・却下を判断する

AIには、テーマだけでなく、そのテーマに合わない例も同時に出させます。

分析用プロンプト

> 次のインタビュー記録から、観察された行動、本人が述べた理由、困りごと、回避策、要望を分けて抽出してください。各項目に参加者IDと時刻を付け、推測は「解釈候補」として事実から分離してください。多数意見だけでなく反対例も示してください。

レポートで示すべき限界

  • 対象者の選び方
  • 実施人数と属性の範囲
  • 録音・文字起こしの欠落
  • AIを使った工程と人が確認した範囲
  • 観察事実と解釈の区別
  • 今回の調査だけでは判断できないこと

少人数の定性調査を市場全体の割合として表現しないようにします。発見した課題は、必要に応じて行動データや追加調査で確認します。

取材端末の選び方はインタビュー向けAIボイスレコーダーの選び方、匿名化の実務は文字起こしから機密情報を削除する方法で解説しています。

まとめ

UXリサーチでAIが最も役立つのは、文字起こしを短くすることではなく、複数の会話から根拠付きでパターンを探せるようにすることです。原音、引用、コード、テーマをつなげて管理すると、分析の説明可能性も高まります。

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