自治体の生成AI調達は、便利な製品を選ぶだけでは成功しません。仕様書に「文章生成ができる」とだけ書くと、入力してよい情報、回答の責任、ログの保存、モデル更新、契約終了時の削除が曖昧になります。調達前に、業務・情報・判断・運用の境界を言語化することが重要です。
自治体・行政のAI活用事例で候補を整理したら、最初は庁内文書の検索や定型文の下書きなど、職員が一次資料と照合できる範囲を調達対象にします。
仕様書へ入れる10の論点
| 論点 | 仕様書で明確にすること | 検収例 |
|---|---|---|
| 対象業務 | 利用課、利用場面、対象外 | 対象外質問を拒否できる |
| 情報区分 | 入力可、要加工、禁止 | 禁止情報を警告・遮断する |
| 学習利用 | 入力・出力を学習に使うか | 管理画面と契約が一致する |
| 保存・削除 | 保存場所、期間、削除方法 | 指定期間後の削除を確認 |
| 権限 | 管理者、利用者、委託先 | 権限別の操作試験 |
| 根拠 | 参照資料、版、引用表示 | 回答から原文へ移動できる |
| ログ | 入力、出力、修正、承認 | 監査用に検索・出力できる |
| 品質 | 正答、拒否、修正率 | 代表質問と失敗質問で測る |
| 変更管理 | モデル・機能変更の通知 | 重要変更前に再検証できる |
| 終了・事故 | 切戻し、連絡、データ返却 | 停止訓練と削除証跡を確認 |
デジタル庁の生成AI調達・利活用ガイドライン2.0は、生成AIの調達・利用に関するリスク管理とガバナンスを整理しています。文章だけでなく画像や音声を扱う場合も、入力情報と生成物の権利・安全性を同じ業務フローで確認します。
価格比較の前に利用量をそろえる
従量課金と定額を単価だけで比較すると、予算超過や過剰契約につながります。利用者数、1人当たり回数、入力文字数、検索対象容量、音声時間、保管期間を想定し、少量・標準・繁忙期の3シナリオで総額を出します。初期設定、研修、監査ログ、追加ストレージ、データ移行、解約時の取り出しも含めます。
AIへ任せない行政判断
- 給付、許認可、処分、優先順位など住民の権利に関わる最終判断
- 根拠法令や原資料を確認できない回答の住民への送信
- 個人の事情をAIが推測して行う評価や分類
- 苦情、虐待、災害、緊急性を伴う相談の自動完結
- 公開前の議会資料や報道発表の無承認公開
AIは判断者ではなく、検索、整理、下書きの補助として配置します。職員がどの資料と照合し、どの役職が承認するかを業務手順へ組み込みます。
30日でPoCを実施する
| 期間 | 作業 | 成果物 |
|---|---|---|
| 1週目 | 対象業務とデータを棚卸し | 業務フロー、情報分類、基準値 |
| 2週目 | 契約・権限・ログ・評価質問を設定 | 試験計画、事故連絡表 |
| 3週目 | 架空・加工データから並行試行 | 正答率、拒否率、修正率、時間 |
| 4週目 | 住民影響と運用負荷を評価 | 本番可否、条件、停止基準 |
検証では成功例だけでなく、古い例規、同名制度、答えのない質問、個人情報を含む入力、指示を無視させる文面も試します。職員が誤りを見抜ける表示か、AI停止時に既存手順へ戻れるかまで確認して初めて検収です。
